山火事(森林火災)が環境に与える影響とは?大気・土壌・生態系へのリスクを解説

2025 / 12 / 19

はじめに

※本記事の内容は 2025年12月時点 の情報をもとにしています。

近年、世界各地で山火事(森林火災)のニュースを目にする機会が増えました。火は森を一瞬で変えてしまいます。でも本当に怖いのは「燃えている最中」だけじゃありません。煙は遠く離れた街まで届き、焼け跡は雨で崩れ、水源の質まで変えてしまう。山火事は、空気・土・水・生きもの・人の暮らしをまとめて揺さぶる出来事です。

ここでは、山火事が環境に与える影響を「大気・土壌・生態系(+水)」の順に、できるだけ噛み砕いて整理します。


山火事(森林火災)とは?まずは基本から

山火事とは、山林や森林など“野外”で発生する火災のこと。英語では wildfire / forest fire と呼ばれます。

火の燃え広がり方は、大きく次の3つでイメージすると分かりやすいです。

  • 地表火:落ち葉や下草など、地面に近い燃料が燃える
  • 樹冠火:木の上部(樹冠)に火が移り、風で一気に広がる(大規模化しやすい)
  • 地中火:泥炭などが地中でくすぶり続ける(発見しにくく長期化しやすい)

特に厄介なのが樹冠火。風・乾燥・燃料の量がそろうと、火は“面”で走り出して、人の手が追いつきにくくなります。


なぜ山火事が増えて見えるのか:背景は1つじゃない

山火事の増加には、いくつもの要因が重なります。

  • 高温・乾燥化(火がつきやすい/燃えやすい期間が伸びる)
  • 燃料(枯れ木・下草など)の蓄積
  • 人の活動域が森の近くまで広がる(着火機会が増える)

「気候」だけが原因ではありません。ただ、暑さと乾燥が強い年ほど大規模化しやすい、という関係は多くの地域で共通しています。


原因は自然だけじゃない:人為起因は“国によって高い”

ここは誤解が生まれやすいので丁寧に。

  • 米国では、山火事の約85%が人為起因(キャンプ火の不始末、たばこ、野焼きの延焼、放火など) (国立公園局)
  • 日本でも、林野火災は人の不注意が中心で、原因が判明しているものの内訳は「たき火」が最多、次いで「火入れ」「放火(疑い含む)」「たばこ」などが続くと整理されています。 (農水省リンヤ)

つまり、「山火事=自然災害」と一言で片付けられない。防げる火も相当数ある、というのが現実です。


山火事が環境に与える主な影響

ここから本題。影響は大きく 大気 → 生態系 → 土壌 → 水 の順で連鎖します。


1) 大気への影響:CO₂と“吸い込む空気”の問題

温室効果ガス(CO₂)を一気に放出する

森林は本来、炭素を木や土に貯める“貯金箱”です。ところが火災が起きると、その貯金が短期間で吐き出されます。

たとえば 2023年のカナダの記録的火災では、炭素排出が 647TgC(中心値) と推定され、CO₂換算だと 約2.4GtCO₂(≒約24億トン) 規模になります(推計には幅があります)。 (CaltechAUTHORS)
同年、焼失面積も 約1,500万ha と“国の一部が燃えた”と言っていいレベルでした。 (カナダ自然資源省)

大気汚染(PM2.5など):煙は遠くまで届く

山火事の煙には PM2.5 を含む粒子状物質が多く、呼吸器・循環器に負担をかけます。

2023年のカナダ火災では、煙が米国東海岸まで流れ、都市部で深刻な大気汚染が観測されました。 (Reuters)
「森の出来事」が「街の健康問題」に変わる、典型例です。


2) 生態系への影響:生息地の喪失と回復の難しさ

山火事は、生きものにとって“住まい”そのものを奪います。火災の熱や煙で直接命を落とすケースもありますが、むしろ長期的に効くのが 生息地の消失食物連鎖の崩れ です。

2019〜2020年のオーストラリアの大規模火災(ブラックサマー)では、約30億匹の動物が死亡または生息地喪失などの影響を受けたという推計が報告されています(WWF委託研究)。 (WWF Australia)

さらに、火災後の裸地には繁殖力の強い植物が入りやすく、地域によっては外来種が先に広がって「元の森」に戻りにくくなることもあります。


3) 土壌への影響:焼け跡は“雨に弱く”なる

山火事のあとに起きるのが、土の性質の変化です。

土が水を弾きやすくなる(撥水化)

高温で燃えると、土の中に“ロウのような成分”が染み込み、**水を弾きやすい層(撥水性)**ができることがあります。すると雨が染み込みにくくなり、表面を流れやすくなる。 (USGS)

表土流出 → 洪水・土砂災害リスクの増加

植生が焼けて根の支えも弱まるため、同じ雨でも流出が増えます。結果として、侵食・濁流・斜面崩壊が起きやすくなります。

USGSは、火災後の斜面では 土石流(debris flow)の危険が2〜5年ほど高い状態が続くと説明しています(条件により前後)。 (地すべり情報)


4) 水環境への影響:灰は川へ流れ、飲み水にも効く

焼け跡の灰や土砂は、雨で川や貯水池へ入ります。これは見た目の濁りだけでなく、栄養塩や金属類などの流入にもつながり得ます。

USGSも、火災が 堆積物・栄養塩・金属の流出を通じて水供給にリスクをもたらし、場合によっては浄水コスト増につながると整理しています。 (USGS)


気候変動と山火事:いちばん厄介なのは“悪循環”

気候が暑く乾く → 火災が増える → CO₂が増える → さらに暑く乾く。
このループが、山火事を「毎年の当たり前」に押し上げます。

そしてもう一つ重要なのが、森が燃えると“吸収源”が弱ること。燃えた森はしばらくCO₂を吸いにくい。つまり排出が増えるだけでなく、吸収も減ってしまう。


山火事を防ぐために、私たちができること

「地球規模の話」に見えるけれど、着火の多くは生活のすぐそばです。

アウトドアでの火の扱い(最優先)

  • 指定場所以外で火を使わない
  • 風が強い日・乾燥が強い日は無理に焚き火をしない
  • 消火は“完全に冷えるまで”(炭の芯が残るのが一番危ない)

※よく言われる「ガラス瓶(レンズ効果)」は**起こり得ても“非常にまれ”**とされています。優先順位としては、たき火・火入れ・たばこ等の管理が圧倒的に重要です。 (NIFC)

日本で役立つ“危険サイン”

日本では 乾燥注意報が「空気が乾燥して火災の危険が大きい」ときに発表されます。
また消防側では、乾燥注意報・強風注意報などを 火災気象通報として扱い、火災警報や火気制限の判断材料にする運用が整理されています。


“木と暮らす”視点で:森を失わないためにできる、静かな選択

森が燃えるニュースを見ると、「どうにもならない」と感じることがあります。でも、木と関わる暮らしは意外と現実的な接点をくれます。

一枚板や無垢材は、何十年も何百年もかけて育った“時間の塊”です。
だからこそ 長く使う/直して使う/引き継ぐ は、それ自体が資源のプレッシャーを下げる行動になる。

派手な正解じゃないけれど、森に対して一番誠実なやり方のひとつだと思います。


まとめ

  • 山火事は 大気(CO₂・PM2.5)→ 生態系 → 土壌 → 水 と連鎖して影響が広がる
  • 火災後は 土が撥水化しやすく、雨で 土石流・洪水リスクが上がる
  • 日本でも原因は「たき火」「火入れ」など人的要因が中心。防げる火は多い (農水省リンヤ)
  • 日常では「乾燥」「風」の情報を味方にして、火の扱いを一段だけ丁寧にする

参考情報(本文で参照した主要ソース)

  • 米国:人為起因の割合(約85%)— NPS / NIFC (国立公園局)
  • 日本:林野火災の原因傾向 — 林野庁 / 消防庁 (農水省リンヤ)
  • 2023年カナダ火災:排出推計(647 TgC)・焼失面積(約1,500万ha) (CaltechAUTHORS)
  • 火災後の土壌撥水化・土石流・水質影響 — USGS (USGS)
  • 2023年の煙害(長距離輸送)— NASA / Reuters (NASA科学)

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